東京 奥多摩温泉 おくたま路 大浴場

「東京 奥多摩温泉 おくたま路」の大浴場は、建物から南に突き出た半島の先端のような場所にある。3方向が川という絶好のロケーション。土地が川に向かって下がっているため、1階でありながら地上4メートルほどの高さがあり、開放感とともに程よく緑に囲まれている。今回新設した露天風呂は、そんな場所の魅力をそのまま楽しむ、自然の中の舞台のような場所である。リニューアル前は、建物の規模に対してはやや小ぶりな内風呂のみだった。内風呂の移設や増築も検討したが、この場所の良さや合理性を考え、既存の場所を活かすことにした。その代わり、外側に大きなテラスを増床し、露天風呂、水風呂、外気浴スペースを新設。内風呂、洗い場、サウナと合わせて、温泉で過ごせる場所を2倍以上に広げている。内風呂は、既存の入母屋型の躯体を活かしながら全面的に改修した。窓はひのきの木製にて作り直し、景色を楽しめるようガラス面を大きく枠はできるだけすっきりとした。室内は黒に近いグレーでまとめ、外の緑や空の色が映えるようにした。サウナも既存のスペースを活かしながら木部を一新。外にはこれまでなかった水風呂を設け、そのまま外気浴へ。これでサウナーにも楽しんでもらえるだろう。


露天風呂は、2方向がほぼそのまま自然だ。頭上には低い軒がかかっているが、実はこれ、既存建物の屋根である。そして偶然にも、湯船をすっぽり覆うのにちょうどいい大きさだった。もしかすると原設計者は、いつかここに露天風呂ができることを見通していたのかもしれない。 低く抑えられた軒が、川と山へ続く水平の景色をより強調している。露天風呂を支える外部テラスは木造でつくった。使っているのは、木造住宅でもっとも一般的な3寸角の材料である。車が近づけない場所なので、材料の搬入や現場での組み立てにも都合がよく、何より架構がシンプルで美しい。柱は3寸角を4本束ね、梁は肘木のように重ねながら外へ跳ね出している。これを繰り返すことで、大きな床を小さな基礎で支えている。上から見ると石張りのテラスなので、まさか木で組んであるとは感じない。これでよい。実際、跳ね出した床そのものが、川側から見上げたときの目隠しにもなっている。周囲はガラス手すりとし、開放感をつくりながら、安心して過ごせる場所を目指している。夜もよい。照明をほどほどに落とすと、周囲のライトアップされた木々が暗闇の中に浮かび上がる。もちろん朝もよい。低い軒の下で陽を避けながら、新鮮な空気を楽しめる。
この温泉が、東京にある。週末の気分転換に。平日だって用事を少し早く切り上げて。ぜひ足を運んでいただきたい。


東京 奥多摩温泉 おくたま路 大浴場

用途:旅館
所在:青梅市二俣尾
竣工:2026年7月
構造:鉄筋コンクリート造
階数:地上3階
建築面積:1764.03m²
敷地面積:14958.53m²
延床面積:3082.34m²

事業主:国際ホテル株式会社
アートディレクション:マウント
設計:佐久間徹設計事務所
構造設計:ANDO Imagineering Group
施工:佐久間建設・三和エステート
撮影:西川公朗
アクセス:JR青梅線「石神前駅」より徒歩約10分
公式サイト:https://www.tokyo-okutamaji.jp/

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