東久留米の家

東久留米、雑木林や畑に囲まれた、ゆったりとした敷地に建つ住宅である。建ぺい率30%・容積率60%、我らが吉祥寺からもさほどの距離ではないのに、これほどゆったりとした住宅地は珍しい。また、建主は、数年前から仕事での付き合いもあって、私たちの設計の特徴もよく捉えていた。とくに気に入っていただいている事例をベースに、設計を進めていくことなるのだが、これがとても面白い。我々が良しとしていることを、改めて考え直す機会になるのだ。設計者としては、当然、以前のものよりもよくしたい!

敷地は、西側に畑、東側が道路に面し、南北に長いので南の庭も想定しやすい。いくつかの可能性を検討しながらも、綺麗な四角いプランをシンプルに配置することとする。立面も左右対称な切妻屋根。これ以上合理的にはできない形である。程よいサイズ感とプロポーションもあいまって、座りも良い。条件のよい南側には大きな開口を設けて庭と連続させる。上階のバルコニーが最適な庇となる。


東側は道路との目線が合わないよう、高い位置に大きく開口する。西側は、現在の畑がいずれ住宅地になる可能性があることと、西日をコントロールしたいこともあって、控えめに細めの高窓とした。残る北面には、駐車スペースを確保した上で、西にも開いた玄関が配置される。もはや他の選択肢はないであろう。

階段を吹き抜けの代わりとして空間の広がりや光のとおり道とし、上階の階段は光を透過するように段板のみのものとする。浴室や洗面室は南の窓や天窓で明るくし、洗濯と物干しの動線をコンパクトするためバルコニーは主寝室からアクセスする。服の収納はファミリークローゼットにまとめ、子供室は将来の自由度をもたせてガランとする。東側の連続するサッシには造作の小庇を設け、バルコニーの手すりのトップは木製であしらった。私たちの住宅設計の基本技を、納め尽くしたようだ。でも、リモコンやスイッチが集まる壁を「家型」のニッチでくぼませたり、屋根は小豆色の板金であったり、他にない特徴も加わっている。

さて、完成した住宅はどうだろうか?考えたことは普段から大切にしている当然のことの積み重ねではあるが、多様性に富んだ家になったと思う。そうだ、この家をショールームにさせていただければ、私たちの考える住宅が、わかりやすく説明できてよい。よく練られているしバランスが良い。といっても住人には迷惑な話なので、そういうわけにはいかないのだけど。


東久留米の家

用途:個人住宅
竣工:201811
構造:木造
階数:地上2
敷地面積:168.19
建築面積:47.38
延床面積:94.76

設計:佐久間徹設計事務所
施工:匠陽
造園:作庭平岡
撮影:石井雅義

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