上馬の家

世田谷区上馬、閑静な住宅街に建つ住宅である。上質な空間になったと思っているが、端的にいうと「楽しい家」である。建主さんはご夫婦それぞれがクリエイティブな仕事をされていて、もともと「楽しく」お住まいだった。だから当然この家も「楽しく」なる。

建築の設計ではその情報量をコントロールするために、ついつい整えることや、揃えることに意識が行ってしまう。が、あまり整ってくると楽しい感じが薄れてくる。建主さんのその辺のセンスは流石で「わかるけど、つまんなくないですか」「うん、確かにそうですね」と何度かご指導をいただいた。


メインの居場所となるのは一階。その中央に階段がある。階段は邪魔にもなるけど、一番変化のある装置ともなる。なにせ、上下に視線を動かすことができる立体的な場所なのだ。大きな踊り場をつくって、あとは極力開放したつくりとする。そのまわりに居場所があって、キッチンや畳のスペースもある、大きなワンルームである。当然。2階の真ん中も階段がある(動いたらおかしい)。これを中心に居場所や水回りが配置され、やっぱり回遊性をもたせた。子供たちのスペースは当面オープンにしてあるので、ここもワンルームの雰囲気がある。

それぞれ細部にこだわってはいるが、作り込み過ぎていないので、自由がきくイメージが残る。その力の抜け加減が「楽しさ」の秘訣か。外観も家のかたちだけど、気張りすぎず整えすぎず、それでもデザインされた感じ。やっぱりこれもさじ加減が良かったように思う。


上馬の家

用途:個人住宅
所在:世田谷区
竣工:2016年9月
構造:木造
階数:地上2階

敷地面積:92.70m²
建築面積:55.16m²
延床面積:119.79m²
設計:佐久間徹設計事務所
施工:匠陽

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