西久保テラスハウス

JR三鷹駅からほど近く、閑静な住宅地に建つテラスハウスである。テラスハウスという言葉には、全戸専用の庭と駐車場を持ち合わせた集合住宅、といったニュアンスが込めた。

建築可能な延べ床面積は、敷地の大きさや建ぺい率・容積率からきまってくる。賃貸住宅の計画の際には、立地や周辺環境と踏まえたうえで、この延べ床面積から、どういった大きさの住戸を何戸配置するかを考えていく。今回の立地であれば、ファミリー向けの上質でゆったりとした住戸が望ましいと判断し、許容の面積160m2強を2つに分けた80m2ほどの住戸が2戸で構成することとなった。当然、3戸、4戸、6戸、といた選択肢も検討した上での判断である。建築基準法の上では「長屋」という用途になるのだが、共同住宅との違いは、玄関から道路まで直接避難できるかといった判断である。1階に玄関が配置されれば、2階へは住戸内の階段で登っていくことになる。とすれば、2階建ての住戸が横に並んだ形式が生まれやすい。結果、専用のアプローチや庭、内部の階段をもつ、ほとんど専用住宅のような集合住宅となるのである。


さて、閑静な住宅街に立地するため、南側に庭をもうけ、LDKを連続させ採光の基本とする。2階の居室も、できるだけ南面させたプランとしていく。構造は木造。上下階の騒音については、同じ住戸内のみの関係だけで済む。ゆったりとしたファミリー向けであるので、賃貸ではあまり見られない、木造らしさを残しておきたい。1階の天井裏の梁を現しとして見せて表現し、一部、柱もそのまま表出させた。空間はゆったりと確保できた。

木造の賃貸住宅は、やや性能に劣りそうなイメージがつきまとう。が、いかがだろうか?適正な配置計画、適正な関係性やつくりの詳細を判断できれば、これほど合理的でやわらかな暮らしに合った、構造はないであろう。木造の集合住宅をつくるさいの、ベンチマークとして考えたい。

ところで、建て主の厚意もあって完成直後の内覧会を行うことができた。それがなんと、この見学会にお越しいただいた方のうち、2組の世帯がそのまま入居を決めてくださった。満室である。もう少しみなさまにご覧いただきたい気持ちもあったが、こんなに嬉しいことはない。


西久保テラスハウス

用途:長屋

所在:武蔵野市西久保

竣工:2019年11月

構造:木造

階数:地上2階

敷地面積:203.14㎡

建築面積:81.20㎡

延床面積:161.91㎡

設計:佐久間徹設計事務所

施工:宮嶋工務店

撮影:根本健太郎

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