井の頭の家 SY

井の頭公園に面して建つ2世帯住宅である。敷地は道路から旗竿状となっていてその奥にあたる北側が公園となっている。道路からの距離感があいまってまるで別荘地のようだ。この立地にてこの環境って見たことがないでしょう!疑うことなく、この環境を活かすことが大前提かつ目指すゴールとなった。

計画にあたっては、南側と北側にそれぞれに良い関係つくることに着目した。南側は、冬は暖かい日差しを呼び込みやすいのに、夏はそこそこコントロールしやすい。ご存知のように、日本の戸建て住宅のほとんどはこの特性に基づいて計画されている。隣地の建物が近くはあるが、工夫してこの特性を活かしたい。一方で、北側は直射を得にくい反面安定した光を得ることができる。住宅街では、裏の建物がこちらを向いていることが多いが、今回は公園だ。そこで、南には日差しを期待した庭と窓を、北には公園を臨む窓を想定した。


2階は子供世帯のスペースである。高いところなので、眺望も良いし、採光条件もよい。LDKを東西に伸ばす形で南北を楽しむ。南側には隣地建物が見えないように高窓を設けその先の空を臨む。北側には大きな掃き出し窓を設けその先にテラスと公園を。屋根の上も楽しんでしまえとベンチも設ける。どっちを向いても視界が開けるのだだ、キッチンで料理をする際には北側の公園を見ることにした。なかなかこういった贅沢な設計はできない。

1階は親世帯のスペース。1階の特徴を活かしたながらLDKから南北を楽しみたい。南側には掃き出し窓と出て楽しむことのできるウッドデッキの庭を。南に庭のスペースをとることで隣地建物からの距離をかせぎ日差しを届けようという考えだ。北側は防犯面も考慮したうえで腰窓とし、その先の公園の緑を楽しむように配置している。各個室からも庭か公園どちらかを楽しむことができる。

無防備に開けていそうな窓達からは、ほとんど周辺の建物を感じない。この緩さのおかげで、まるで林の中で過ごしているような錯覚に陥るのである。四季折々が楽しめそうで、羨ましい。


井の頭の家 SY

用途:個人住宅
所在:三鷹市井の頭
竣工:2022年3月
構造:木造
階数:地上2階建
敷地面積:174.49㎡
建築面積:85.39㎡
延床面積:136.78㎡

設計:佐久間徹設計事務所
施工:匠陽
造園:高橋園
撮影:石井雅義

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