吉祥寺の書庫

都市の中で庭を囲む回廊

6年前吉祥寺の住宅地に読書を楽しむ建主のための住宅を設計した。そこに本が納まりきらなくなったため、同じ建主からの依頼でそこからほど近い敷地に、約5万冊の本を収蔵するための小さな別荘を建てることになった。敷地いっぱいにヴォリュームを配置し、中央を中庭として抜いて緑の庭を囲む回廊状の構成である。前面道路から離れた場所にソファベッドや水回りなどの住環境を設えた。回廊の両側に連続する本棚は歩きながら本を探すことができ、内部を巡る動線と本棚が重なることで建築そのものが書物のための装置となる。外周には本の収蔵量を最大化するために開口部のない壁が連続するのに対し、内部は中庭に向かって大きく開く。都市の密集した環境の中にありながら、回廊の内部には庭の緑と柔らかな光が取り込まれる。回廊は動線であると同時に、庭の緑を眺める縁側のような場所でもある。


柱と梁を1,200mmのモジュールの扁平な断面とし、その柱間に設けられた本棚が空間のリズムをつくる。本棚の一部は扁平柱の座屈を抑える役割も担い、棚板や背板も構造体の一部として働く。本棚が家具であると同時に建築の構造体を兼ねることで、書物を納めるための秩序が全体に現れる。特殊なプログラムでありながら、街との関係をもたせるための透明なファサードから本という知的な集積が奥行きをもって連なり、内部に設けたスクリーンの開閉によって距離感を調整する。


吉祥寺の書庫

用途:個人住宅
所在:武蔵野市吉祥寺
竣工:2025年7月
構造:木造
階数:地上2階
敷地面積:135.10㎡
建築面積:52.42㎡
延床面積:104.84㎡

設計:佐久間徹設計事務所
施工:宮嶋工務店
造園:彩苑
撮影:西川公朗

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