戸田の家
戸田市、荒川のほど近くに建つ住宅である。間口が5.6Mなのに対して、奥行きが27.2Mと、とにかく奥に深い敷地である。この東西に細長い敷地を活かすことが課題であった。
「建築家」の野心的な発想でいくと、一番奥と一番手前に建物をつくって、中央に大きな中庭を設ける、もしくは、幾つかの前庭や坪庭や光庭や裏庭を設ける、といった戦略が思いつく。いかにも細長いことを活かしてそうだから。ただ、ちょっと検討すると、そんな必要がないことに気がつく。敷地が大きいので、そこまで細くないし、無用なコストはかけたくないからだ。
検討の結果、細長い敷地の中央部に、やや長い長方形の建物を配置することとした。手前は前庭(車も止まる)、奥は奥庭(遊んだり物干しをしたり)とした。生活の中心となる居場所は2階に設け、回遊性のある大らかな空間がつくられた。端から端まで見通しのきく、緩やかな勾配の天井が大らかさを強調している。
結局はまた、野心的な発想よりも現実的な暮らしの質を優先している。いつになったら出世できることやら。
戸田の家
用途:個人住宅
所在:埼玉県戸田市
竣工:2014年10月
構造:木造
階数:地上2階
敷地面積:165.97m²
建築面積:78.29m²
延床面積:137.77m²
設計:佐久間徹設計事務所
構造:筬島建築構造設計事務所
施工:株式会社タカキホーム(ASJ武蔵野スタジオ)