Mothers Edge Garden FURATO
Mothers Edge Garden FURATOはなだらかな丘陵地に位置し、ゆったりとした農園と古い倉庫を再生した建築からなるファームガーデンである。その名は「年齢・障がい・国籍などに関係なく地域に生きる人々が、生き生きとフラットにいられる居場所を作る」「誰もがふらっと立ち寄ることができる場所になる」という意味をこめてつくられた。農園では野菜や果物を栽培している。ただの畑ではなく、ランドスケープ自体が多様な植生をつくる、植物園としてつくられている。建物ではその食品加工や販売が行われる。その他に陶芸やガラス細工を想定した創作活動の場を設けられた。
我々の担当は、この倉庫を活動の場にリノベーションすることであった。かなり古い。増築の過程もよくわからない。ただ、木造のしっかりとした構造体と、前室と内部の2層からなる空間構成が面白かった。この前室を「三和土空間」とし、外部の農園と内部の作業室の中間領域と見立て計画の中心とした。枝葉のついたままの果物や泥のついたネギが散らかっても良いような場所であって欲しい。お弁当を食べる、イベント時の販売スペースになる、ギャラリーとして作品を展示する、様々な居場所になる想定だ。
外装も内装の過半は既存の状態をそのまま利用している。古いものを、少しだけ新しいものに入れ替える、そんな建築だ。完成してみると完成してないようにもみえた。きれいになっていない場所もある。ただ、このルーズさが多様性を受け入れるおおらかさにつながっているし、これから良い居場所になってくれる期待を感じさせてくれるような伸び代に思えた。ちゃんと作りすぎないよさ。人が主役になってくれそうだ。うまくいったと思う。
Mothers Edge Garden FURATO
用途:福祉施設
所在:愛知県知多市新舞子
竣工:2025年4月
構造:木造
階数:地上1階
敷地面積:約7200㎡
建築面積:434.16㎡
延床面積:434.16㎡
デザイン監修:佐久間徹設計事務所
施工:井野建築
撮影:杉浦乾堂