新町の家
東京の多摩地域、近年開発された家も増えてきているが、古くからの家のも多く、畑や無人の野菜販売所も残るような環境に建つ住宅である。北側が道路で、敷地奥にあたる南側はやや開けた状態にある。決して大きくはないが、さほど悪条件のないオーソドックスな敷地だ。
必要とされる空間は非常にシンプルに考えられていた。LDKといった発想をもたず、多目的な畳の空間を中心として、あとはそれを支える諸要素で構成する。駐車場を必要としない。これは助かる。一方で、耐震や温熱環境については高い性能を確保しながらも、昔ながらの日本的な住まい方を大切にするという。こちらは簡単ではない。予想通り、計画の大きな枠組みは早い段階で見えてきた。一方で、細やかなプランの調整や材料選び、設備的な計画、ディテールの検討には相当な時間を要したように思う。
一言でうまくまとめられない住宅である。通りに対して落ち着いた佇まいになった。冬暖かく夏涼しい環境がつくられた。さまざまな種類の木を採用しそれぞれ大切に取り扱った。コンクリートや石、左官などの材料にも細心の注意を払った。陰影のある落ち着いた空間ができた。想いが詰まった、間違いなく上質な住宅である。(うらやましい!)
が、それ故にここでの暮らしのことが気にかかる。背筋を伸ばして凛と暮らしてもらいたいような、でも、やっぱり家はダラダラできる居場所でもあってほしい。嬉しいことに、先日新しい家族が増えたとのこと。これからどのような暮らしが繰り広げられていくのだろうか?と想像するのが楽しいのである。
新町の家
用途:個人住宅
竣工:2013年12月
構造:木造
階数:地上2階
敷地面積:75.01m²
建築面積:37.43m²
延床面積:74.86m²
設計:佐久間徹設計事務所
構造:筬島建築構造設計事務所
施工:宮島工務店