吉祥寺東町の家
吉祥寺駅からほど近く閑静な住宅街、旗竿状の敷地に建つ住宅である。もともと暮らされていた家を解体し一部に新築した。
建主さんと話をしていると、基本的に、落ち着いた静かな場所を望まれていた。もともとの生えていた紅葉の木を活かした日本的な庭があって、縁側があって、畳のスペースもあって、そこでもお酒を楽しもう。全体の空気感はイメージしやすかった。ところが「CDを8000枚、ベースギター40本を見せながら収納したい」とのこと。お、おお〜〜っ!突如、全体のイメージが崩れ去る。この手の展開は嬉しい驚きである。是非、お任せください!とお願いしたように思う。
さて、どのくらいの壁面が必要になるのか、CDとギターはどのような関係で並び、生活にどのくらい関係していて良いものか。趣味のものに囲まれた家ではあるが、一人で暮らす訳ではないので、バランスが重要になってくる。2階を主要な居場所としているが、その東面の壁一面をCDの収納棚とし、それを適度に隠すように間仕切り壁を配置した。その間仕切り壁に、表にはお気に入りの5本を、裏面にたくさんのギターをディスプレイする。いちばんのポイントは、大量の趣味のものを楽しむことができるが、空間としては圧迫感のないゆったりとした状態を作ったことだ。天井は木構造を表しとして、大きなスペースとなっている。ワンルームであるが、キッチンダイニングリビングそれから、仕事ができるコーナー、趣味のコーナーと展開している。
1階には寝室や畳室、大きなクロゼットや水回りがならぶ。予定通り、南の庭に面した畳室には縁側を設け、紅葉を中心とした庭を楽しむ場所ができた。旗竿状のアプローチは緑を楽しむ庭のように設えている。
最初の嬉しい驚きが、結局しっくりと落ち着いた住宅になるのだから、不思議なものだ。やっぱり設計は面白い。
吉祥寺東町の家
用途:個人住宅
竣工:2018年5月
構造:木造
階数:地上2階
敷地面積:144.37㎡
建築面積:57.63㎡
延床面積:115.26㎡
設計:佐久間徹設計事務所
構造:筬島建築構造設計事務所
施工:宮嶋工務店
撮影:見学友宙