吉祥寺本町四丁目の家

武蔵野市吉祥寺、我が設計事務所からほど近く、閑静な住宅街の旗竿状の敷地に建つ住宅である。旗竿状ではあったが、奥にあたる東側が緑豊かな公園に隣接していて条件がよい。

建主さんとは、計画以前に、この土地以外の敷地も含めお話しする機会があった。当時は、野望の詰まった壮大な話だったが、しばらく期間が経ち、非常に現実的な状況で計画はスタートした。借りていた土地建物が手に入り、そこで建て替えをしようというものだ。建て替えの計画であるので、季節の移ろい、1日の陽の動き、風通しなどについては、当然熟知されている。我々にできるのは、そこでうまく恩恵を得ていなかったところに気がつくこと、それから、新しい価値を見いだすことである。


今回の計画では、公園のある東側を活かすことが新しく付加した価値であった。敷地条件から境界いっぱいに計画される建物を、南と東、に開くようにしている。

2階は東南角にキッチンを設けつつも、ダイニングを東に向け、リビングを南に向けながら、緩やかにつながるワンルームを構成した。一体となっているキッチンとダイニングテーブル、その脇にある腰をかけることのできる畳のスペース、ちょっとずつ変化しながら連続した居場所となるよう意図されている。1階は公園側である東向きに小さめな居室をならべ、条件の劣る西側に家族全員分のウォークインクローゼットを確保した。玄関のある南側は、防犯上の理由から比較的閉じた状況であるが、これも東側を活かしたために可能になった。

近所なので、比較的お伺いする機会が多いのだが、この写真とほとんど変わりなく住まわれているのにいつも驚く。今後も、若い所員の勉強のためとして、お話し好きな建主さんのところにちょこちょこ訪問させていただこうと思っている。


吉祥寺本町四丁目の家

用途:個人住宅

所在:武蔵野市吉祥寺本町

竣工:2017年7月

構造:木造

階数:地上2階

敷地面積:110.34㎡

建築面積:52.99㎡

延床面積:102.89㎡

設計:佐久間徹設計事務所

施工:匠陽

撮影:石井雅義

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