御殿山の家
武蔵野市御殿山、事務所からほど近くの閑静な住宅街に建つ住宅である。敷地は、西側に道路、他3方はやや建て込んだ状況にある。建て込んだ敷地で設計をする場合、自然の取り入れ方が重要だ。1日を通して光を取り込み、風を通して、外部と繋げていきたい。飽きるほど話している。この家では「2つの庭」と「2つの吹き抜け」によって豊かさを確保しようとした。
敷地奥(東の庭)側にダイニングを、敷地手前(西の庭)のほうにリビング、その中間にキッチンが配置されるような構成としている。建物の端から端まで対角線上に視線が抜ける。敷地を有効に広く感じさせる手口の1つだ。条件の悪い南側にはあまり期待せず、東西を等価にそれぞれ豊かな外部空間として扱う。東側は奥に建物が建つため、採光上は不利であったので、上部を吹き抜けとして、さらに天窓まで設けている。西側には出ることができるようなテラス空間を。光の届きにくい中央部に階段を設け、階段の上部にも天窓を設けている。どうだ!南側の庭が確保できなくても、一日中、どこかに陽が届く家になったぞ。普段考えていることをシンプルに実践できている。
建築の構成の話ばかりになったので、もっと暮らしぶりがイメージできる話しにしよう。1階には玄関の他に、リビングダイニングキッチンと少しバックスペースを設け、階段は家の中心に配置。基本的に大きなワンルームである。ダイニングが東側にするのは朝日を楽しみたいから。キッチンが家の中心にあるのも家事と暮らしが一体的になるようなイメージから。その延長にちょっと裏を設けて、収納のバランスをとる。全体を見渡すことができるが、それぞれの場所の質が異なるようなワンルーム。トイレが玄関の側にあるのは他に扉が2枚ある場所をつくりにくいから、でもデザインでトイレと感じさせないように工夫して。2階には水廻りと寝るための場所がいくつか、ファミリークローゼットも用意されている。が、どこもあまり閉じた場所にならないようにしている。
新しく家を建てたい方とお話をする際に、私たちが考えていることを説明するのだが、これはちょうど良い。程々の課題があり(建て込んでやや採光が難しい)そのなかで伸び伸びとゆったり暮らすための家。いろいろな理由を説明していくうちに、本質的な考え方がお伝えできそうな気がする。あ、といっても似た家がたくさん出来るわけでもないのだから不思議なものだ。
御殿山の家
御殿山の家
用途:個人住宅
竣工:2019年3月
構造:木造
階数:地上2階
敷地面積:100.26㎡
建築面積:50.92㎡
延床面積:91.63㎡
設計:佐久間徹設計事務所
施工:匠陽
撮影:石井雅義